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日本では『美しき諍い女（いさかいめ）』でジャック・リヴェット監督の名が広く知られる様になったのではないかと思います。そして、『ジャンヌ/愛と自由の天使』『ジャンヌ/薔薇の十字架』『ジャンヌ・ダルク/I 戦闘　II 牢獄』を経て、1996年に公開された今作『パリでかくれんぼ』は公開前から楽しみで映画館で鑑賞した思い出深いジャック・リヴェット作品のひとつです。個人的には80年代に入ってからの作品『北の橋』からがリアルタイムなのですが、フランス映画というと欠かせない大好きな映画監督のお一人です。

ましてや、広くシャンソン・フランセーズが好きな者としては、エンゾ・エンゾが歌手 ENZO ENZOとして出演していて歌もしっかり聴けるので嬉しかったものです。また、老いても素敵なアンナ・カリーナの歌声も聴けます。ナタリー・リシャールとマリアンヌ・ドニクールが一緒に歌い踊るユニークなミュージカル風の場面、ジャック・リヴェット監督もイダに話しかける老人役でちょこっと登場したりと、今も浮かびほっこりします☆　


母親を探しているイダ
盗み癖のぬけないバイク便のニノン
5年間の昏睡状態から目覚めたお嬢様ルイーズ

3人の愛すべき女の子たちが繰りひろげる恋のシーソーゲーム

3人のパリジェンヌの"自分さがし"が微妙に交錯する。それぞれがそれぞれ（ありのまま）でいて、でもそこが健気でとてもかわいい・・・という。この作りが素敵だ。現代におけるロマンティックとは、なにも大袈裟な装置や意匠を必要とはしない。それが如実にわかる作品である。舞台となるのも、緑あふれる公園やその辺りの街角のベンチだったりして「いわゆる観光客」が喜ぶようなパリではなく、素顔のパリなところがいい。そこでミュージカルが爆発する。ふと冷静になってみれば、唐突に歌い出すというのは相当におかしい。だがそれをシリアスの頂点で、あくまでも「手法」としてぶつけているもんだから、普通なら何だかなあ〜となるはずが、この感情のほとばしりは実に正しい！と素直に酔えてしまうのだ。ジャック・リヴェットは策士である。軽くて深い。単なるかわいい女の子好き、というだけでは終わっていない。　菊池里香（映画評論家）

1995年　フランス映画　コロンビア　定価15800円　
159分　字幕スーパー　MONO Hi-Fi　NTSC　VHS　現在廃巻です。

パリでかくれんぼ / HAUT BAS FRAGILE

監督：ジャック・リヴェット
製作：マルティーヌ・マリニャック
脚本：ロランス・コート / マリアンヌ・ドニクール / ナタリー・リシャール
パスカル・ボニツェール / クリスティーヌ・ローラン / ジャック・リヴェット
撮影：クリストフ・ポロック　音楽：フランソワ・ブレアン
出演：ナタリー・リシャール / マリアンヌ・ドニクール / ロランス・コート
アンドレ・マルコン / ブリュノ・トデスキーニ / アンナ・カリーナ / エンゾ・エンゾ
ジャック・リヴェット / アラン・リグー / ラズロ・サボ / マルセル・ボゾネ
　
ジャケット：B+　本体：A
*ジャケット背ヤケがありますが、表裏は綺麗です。